sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

12th◇旅の終わり

エルネア王国…ここが?世界中から強者が集まると聞いて来たんだけど、何?こののんびりした感じ。

「あの!すみません、ここはエルネア王国で間違いないですか?」

「やぁ、旅の方。ようこそエルネア王国へ!いい国でしょう?ゆっくりしていって下さい」

間違ってはいない…じゃぁ情報の方が間違ってたの?

「なにかお困りですか?」

っ!!!!反射的に鞘に掛けようとした手を掴まれる。わたくしが背後を取られた?

「そんな物騒なもの、ここでは必要ありませんよ」

こ、この人…強いっ!

「お腹空いてません?食事でもいかがですか?」

軽い口調に一転し、掴まれたままの手を引かれ階段を昇ると涼やかな水の音を奏でる噴水が見えた。どうやらその奥に見える大きな建物へ向かっている。繋がれた手に視線を落とすと急に身の危険を感じた。

「は、離してください!」

離すどころか逆にしっかり握られる。

「ヤダね。君、何するか分かんないし…取り敢えず身元確認するからウィアラさんの所に連れて行く。すぐそこだから、大人しく付いて来て」

え?もしかして犯罪者扱い?それとも人身売買とか?この状況…まずくない?ちょっと待って…わたくし、どうなるの?

 

 

「いらっしゃい。あら、ルクバ君が女の子連れてるなんて珍しいわね!どなた?」

「おはようございますウィアラさん。今朝入国した旅人さん。名前は…」

「あ、『エレナ・エスパーダ』と申します」

エスパーダ様です。じゃ、そういう事で!私はこれで失礼します」

へ?そういう事ってどういう事?あのぉ…わたくしはどうなるの?

 

事の次第を説明すると、この店の店主ウィアラさんは大笑い。そして色々と教えてくれた。

さっきの人の名前は『ルクバ・クルマン』

独身で恋人ナシ(そんな情報は要らない!)。魔銃師会に所属。魔銃師筆頭。前導師。ウォーリアーキング。エルネア杯の優勝者。『龍騎士』。両親も『龍騎士』。恋人募集中(だからその情報は必要ない)。

…ん?よく分からないけど、やっぱり只者じゃないって事ね。

それと、世界中の強者が参加しているという噂の大会は、エルネア城の奥の部屋にある転送盤から入れると教えてもらった。早速行ってみよう!

 

ここかな?魔法陣が描かれた場所を見つけ、足を踏み入れようとしたその瞬間、中から人が出てきた。

「エレナさま!やっぱり来ると思ってた」

「ルクバさん?!」

「これから入るの?頑張ってね」

「待って!あなた本当は強いんでしょ…手合わせ願える?」

「んー、今?ちょっと無理かなぁ…また今度ね!」

 

あれから何度も試合を申し込んでるんだけどルクバさんは受けてくれない。

「そんなことより、釣りでもしない?ハーブ摘みは?」

こんな感じであしらわれる。

「わたくしたち知り合ってだいぶ経つよね?ルクバさんとはもっと仲良くなりたいんだけど…」

ええ、だいぶ経たないわよ…出会ってたったの2日。そんな事は分かってるけど、もっと仲良くなれば試合だって受けてくれるんじゃない?そう思ったの。この国最強の武人、ルクバさんの…武人としての顔が見たい。正直、見た目は到底武人に見えないのよ…この人。優しい顔立ちで、女だって言われたら納得しちゃうくらい柔らかい表情するし…。でも、剣を抜こうとしたわたくしの手を押さえた時の力…その時わたくしの背中に流れた一筋の冷汗は彼の本質を…わたしくの本能が感じた取ったからだと思うの。

 

「おはようルクバさん。へぇ…こんな広いお屋敷に一人暮らし?」

今日こそは手合わせしてもらおうと朝早く家を訪ねた。

「エレナ…さま?おはよう…ございます………ふあぁぁ……」

大きな欠伸!ふふっ、寝ぼけてる?髪もハネてるし…直してあげようと手を伸ばした瞬間、景色が反転した。組み敷かれてる…鋭い眼で見下ろされ背筋が凍る…。やっぱりこの人…強い!

「あ、ごめんっ!!」

慌てて離れたルクバさんは、いつもの柔和な表情に戻っていた。

「こっちこそごめんなさい!か、帰るね」

逃げ出すように家を後にする。な、なに…なんでこんなにバクバクしてるの?治まらない鼓動を落ち着かせようと深呼吸する。あんな顔…初めて見た。……あっ、手合わせお願いするの忘れた…もう!何しに朝から会いに来たのよ!

 

どうしよう…ルクバさんの実力が知りたい。でも、どんな顔して会えばいいのか分からない。なのに、単に…会いたい。だけど……ああーっ、どうすればいいの?

「こんにちは。今日で一年が終わりですね。この先の旅路にもエレナさまに幸せが…ありますよう……あ、あの!この先はこの国で一緒に暮らしませんか?あ、いや…違う!そういう意味じゃなくて!…ごめん、忘れて!」

えっ?『一緒』に?それって…そういう意味じゃないって、じゃぁどういう意味なの?ルクバ…さん?

 

 

出国する…なら早い方がいい…。そう思うのにルクバさんのあの言葉が頭から離れない。きっと深い意味はない…ないんだって!そう言い聞かせても、この国で暮らしている自分の姿が思い浮かんでくる。そして、わたくしの隣には………

ダメダメ!わたくしは剣術を極めるために旅に出たのよ。こんな平和な国で暮らす意味は……ない…でしょ………。

「ルクバさんっ!」

試合に誘うの!わたくしと手合わせを……

「あ、あのさ……二人で…どっか行かない?」