sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

milly◇約束

 

▷ウィアラの酒場

「アイク、ちょっと付き合え」

親友のジュストさんとウィアラの酒場を訪れた。いつもの気さくな雰囲気はなく、まるでこれから試合が始まるかのように鋭い目をしている。何かあったんだろうか…ただ食事に誘ったって訳じゃなさそうだ。

「ジュストさん、どうかした?」

そう言えば10日ほど前、妹のインファンタさんを紹介されたな…その答えでも聞かれるのか?

「アイク、明日は誕生日だったよな?」

「あ、あぁ…そうだね。何?前祝いでもしてくれるの?」

なんとか場を和ませようとしたが、どうやらムリなようだ。

「11歳になるんだよな?……結婚とか、考えてないの?」

やっぱりインファンタさんの事か。ここは真面目に答えないと…な。

「別に考えてない訳じゃないけど今は考えられない。そんなに器用な人間じゃないからさ。ジュストさんも知ってるでしょ、僕は龍騎士になりたいんだ。まずは今年のトーナメントで成績を残してエルネア杯への出場権を手に入れなきゃいけない…だから今は恋愛なんてしてる暇はない。ごめん!…インファンタさんの事…だよな?」

「あ、いや…妹の事はいいんだ………いや、よくないけど………あああっ、クソっ!全部お前が悪いんだからなっ!」

「な、なんだよ…ちゃんと答えただろ!訳分かんないんだけど」

「一発殴っていいか?」

「なんでだよっ!」

ま…まさかシャオちゃんの事?いや、でもきちんと断ったし…。いくら僕でもシャオちゃんをそんな目で見た事なんてないから!

「じゃぁ、龍騎士になったら結婚も考えるって事だな?」

「ま、まぁ…なれれば、ね。いったい何?奥歯に物が挟まったような…はっきり言ってよ!」

「場所を移そう。お前の家に行くぞ」

 

 

▷一昨日…

「アイクの事が好きなのっ!アタシと付き合って!!」

「待ってシャオちゃん、少し落ち着こうか」

「落ち着いてる!ずっと好きなの…子供だったけど、そう伝えてきたつもりよ。やっぱり本気にしてくれてなかったのね…」

「あ、いや…」

「アタシは本気よ。本気で好きだって伝えた。だから…アイクの気持ち、ちゃんと聞かせて」

「ごめん…シャオちゃんの気持ちには応えられない」

「そう…………アタシの事、嫌いなのね…」

「好きとか嫌いとかじゃない。シャオちゃんは家族みたいな存在で…だって生まれたときから知ってるし、ずっと成長を見てきた。ナトルの制服に袖を通した時も、昨日山岳服を身に纏った瞬間も…君のお父さんと一緒にずっと見守ってきた。そんなシャオちゃんを…そんな風に考えられない」

 

 

 

▷昨日…

「シャオ、どうした?いつものお前らしくないな」

「父さん…。別になにもないわ!アタシは元気よ!」

「父さんに言い難い事なら…母さんにでも、友達にでもいいから、ちゃんと吐き出しなさい。ひとりで抱え込んでいても前には進めないぞ」

 

 

 

 

▷城下の屋敷

「お茶でいい?それとも…ポムワインの方がいい?」

「酔ってする話じゃない…お茶でいいよ」

ティーセットを用意して腰掛ける。いったいどうしたんだ?

「で?僕に言いたい事があるんだろ?」

「……………」

「そんなに言い難い事?僕、何か気に障る事した?」

「アイク、山岳エドモンド家の婿になってくれ!頼む!!」

「はぁ?婿?えっ…婿って…えっ、えっ…?」

「頼む、シャオと結婚してくれ!お前が龍騎士を目指している事は分かってる。結婚するのはその後でいいから…」

「ジュストさん?自分が何言ってるか分かってる?」

「分かってるつもりだ」

「………シャオちゃんはまだ5歳だろ?いくら跡取りでも、慌てて結婚相手を決める必要なんてないんじゃない?それに…僕は明日で11歳になるオジさんだよ?もっと歳が近くて、有望なヤツが大勢いるだろ」

「あぁ、俺も全く同じ事をシャオに言った。だが…お前じゃなきゃダメだって聞かないんだ。……あんな顔されたら父親として娘の気持ちを大切にしたくなるさ…。まぁ、アイクが俺の息子になるのは癪に障るけどな!」

「息子になるとか…勝手に決めんなよ。僕にだって選ぶ権利くらいあるだろ」

「うちの娘じゃ不満なのか?」

「シャオちゃんにも言ったけど、そういう目で見た事ないんだ。シャオちゃんは可愛いよ。可愛いけど…なんか…やっぱりさ、僕には考えられない」

「アイクならそう言うと思った。もし俺に遠慮して断ったんなら殴るつもりだった…そこはよかったんだけど、それでも娘の気持ちは大切にしたい…だからシャオの事、本気で考えてくれないか?もちろん来年のエルネア杯に集中してくれて構わない」

「その間にシャオちゃんの気持ちが変わったら?」

「その時は俺が責任持って誰か紹介する!」

「ふざけんなよ…」

 

 

 

▷エルネア杯

「ジュストさん、手加減なんてしたら許しませんよ」

「当たり前だろ!負ける気なんて更々ねぇよ」

勝った方が勇者となり、バグウェルへの挑戦権が与えられるエルネア杯の決勝戦。近衛騎士隊長と山岳兵隊長が対峙した。

 

そして白夜。

「護り龍バグウェルに挑むのは…『アイク・ビリンガム』!」

さて…ようやくここまできた。5年前の約束、シャオちゃんは覚えてる?僕が頑張ってこれたのはシャオちゃんとの約束があったからだよ。だからちゃんと見てて!僕は必ず龍騎士になってみせるから!

 

 

 

▷5年前…

「ねぇ、アイクなら龍騎士になれる?」

龍騎士?うーん、今の僕の実力じゃぁムリだな」

「ええーっ!アイクでもムリなの?」

「シャオちゃんこそ兵隊長になって、いずれは龍騎士でしょ?」

「アタシ?なれるかなぁ…。そうだ!アイクもアタシも、龍騎士になろうよ♪ね?」

「なれるかどうかは別として、目指すのは悪くない、かな?」

「うん!アイクは龍騎士になる。そしてアタシも絶対になるからね!約束だよ♪」

「約束ね…。ま、取り敢えず頑張ってみるよ」

 

 

 

 

 

▷幸運の塔

「約束は果たした。次はシャオちゃんの番だ。僕が側でサポートする…これからずっと君の側にいてもいいかな?」

「それだけ?ずっと大人しく待ってたのよ?ちゃんと『好き』って…言ってよ」

「…………シャオちゃんが…好きです。僕と付き合ってください!」

「アタシも大好き!ねぇ、早く結婚しよ♪」

「あ、あの…来年まで騎士隊長勤めなきゃならないんだ…だから早くても再来年?ごめん…そこまで考えてなかった」

「ええーっ!もうっ、父さんに言いつけてやる!」

「それだけは勘弁して…」