13th◇プロポーズ前夜
〜ロビー殿下視点〜
「今日はわたしが送るよ♪」
デートを終えて僕が『送るよ』と言うと、そう返してきた。
居室に着き、お茶を用意する。
「お待たせ…」
クルキスちゃんはソファーに身体を預け、微睡んでいた。
(最近、忙しそうだったもんな…)
お茶をダイニングテーブルに置き、起こさないようにそっと毛布を掛け、隣に腰を下ろす。聞こえてくる規則的な寝息は、こちらの眠気まで誘ってくる。
少しの間、寝ていただろうか。ドアの開く音で閉じていた目を開ける。
「あら、騎士隊長が来てたのね。邪魔しちゃったかしら?」
「あ、母さん。別に邪魔じゃないよ。クルキスちゃん、ちょっと疲れてるみたいで…」
「そうね…未知の魔人の討伐作戦で、各組織長には尽力してもらってたから。お陰で無事作戦は成功。お疲れ様、ありがとう…」
そう言って母はクルキスちゃんの頭をそっと撫でた。
「ねぇロビー、自室のベッドで寝かせてあげたら?ソファーじゃ休まらないわよ」
言われてみればそうだよな。
「よし、クルキスちゃん、僕に掴まって」
寝ている彼女を抱きかかえ、隣の騎士隊長居室へ移動する。全然起きる気配がない…余程疲れているのだろう。
そっとベッドに下ろし……えっと………鎧は……どうする?外した方がいいに決まってる。けど…
「寝込みを襲う気?」
「あっ、い、いや!!違いますよっ!」
ニヤニヤしながらプリオルさんが入ってきた。何でこう…いつもいつもこの人は絶妙なタイミングで現れるんだ?
「はい、どいてどいて。鎧は私が脱がせるから」
僕は慌てて隣の部屋へ移動した。
「相当疲れてるみたいね。隊長に就いて初めて陛下の勅命が下されて、気合入れてたから。ありゃぁ、朝まで起きないんじゃないかな」
「疲れてるんだったら、僕とのデートなんてすっぽかしてくれてよかったのに…」
「そんな事する子じゃないことくらい、殿下も分かってるでしょ」
確かにそうだ。僕の方が気付いてあげなきゃいけなかったんだ。何やってんだよ…
「さて、私は帰るわね。あ、それと…今、クルキスちゃんが無茶した時、止められるのは殿下だけよ。だからあとは任せた!妹をよろしく」
結局朝まで目を覚まさなかったクルキスちゃん。さすがに目覚めた時、傍に僕がいたら驚くだろうと思い、夜が明けきれる前に部屋をあとにした。
プリオルさんの言葉…正直、そう言ってもらえた事は嬉しかった。そして一晩中考えた。と言うか思った。このままクルキスちゃんと一緒に暮らしたい…。家族になりたいと…。