sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

08th◇継承

シャウラ…あのさ、二人でどっか…行かない?」

「え…わたしと?あ…そのぉ……えっと………」

返答に困っていると手首を掴まれ強引に引っ張られた。

昨日までナトルの制服を着てたわたし達…昨日までわたしと同じくらいの背丈だった彼…昨日まで普通に手を繋いで走り回ってたのに…今、わたしの手首を掴む彼の手は大きくて…目の前の彼の背中は広くて…山岳服が似合ってて…

歩くの早すぎ!それじゃなくてもドキドキしてるのに、鼓動に息が追いつけないよ…もっとゆっくりじゃダメなの?

 

「で?シャウラ、俺と付き合ってくれるよね?」

「……ま、待って。いろいろ早すぎない?だってだって、わたし達、昨日成人したばかりだよ?」

「だからだろ!お前を狙ってるヤツがいるんだからさ…だから!俺の恋人になって欲しい。『はい』って返事するまで帰さないよ」

わたしもアッティリオが好き…だけど今、即答出来ない理由は…アッティリオが山岳クルマン家の後継ぎだってこと。わたしは…巫女になるのが夢なの。

 

「悪い…シャウラの夢は知ってる。その夢を奪おうとしてるのも分かってる。だけど…俺はシャウラの夢よりシャウラ自身が欲しい。わがまま言ってごめんな、でも俺はお前じゃなきゃ…」

「わ、わかった!わかったから…離して」

すっぽりとアッティリオに包み込まれ、耳元で…泣きそうな声でそんなこと言われたら、わたしの夢なんてどうでもよくなるでしょ…だって、わたしもアッティリオが大好きなんだから。

そんなこんなで、成人した翌日には恋人となり、翌年の4日に結婚。人生の大半をアッティリオと過ごすことになった。

 

 

アッティリオが家督を継いだ日のこと、よく覚えてる…。他の山岳家が代替わりしていく中、アッティリオはなかなか家督を譲ってもらえなくて悩んでたね。ちょうどその頃、わたしはお義父さんからいろいろ教わったの。家長を支える心構えのようなものを。アッティリオはとにかく強さを求めていたから、わたしもそれを応援してた。でも、お義父さんは伴侶はそれじゃダメだって教えてくれた。だから悩んでるアッティリオをだだじっと見守ることが出来た。一皮剥けたアッティリオは更にカッコよくなって、精神的にも強く、逞しくなった。家督を譲る母親のジェナさんは誇らしげに、自らのその任を息子に委ねた。

 

「アッティリオ、家長就任おめでとう!来年からはリーグ戦で戦わなきゃいけないし、もっともっと鍛えなきゃね」

「出た…スパルタシャウラ

「だって、アッティリオにはお義母さんのように兵団長になってもらいたいし、龍騎士にもなって欲しいんだもん」

「それは俺もなりたい!けど、今日はシャウラとベタベタしたい」

ひょいっと担がれ階段を昇る。それを見ていた家族はサーッと家を出た。あぁ…恥ずかしい!こういうとこ、山岳家ってイヤっ!

 

シャウラ、ありがとな」

「わたしは何もしてない」

「だから、ありがとな」

「…うん。で、でもこれからが大変なんだからね、しっかりしてよ兵隊長!」

「なに今さら照れてんの?」

 

兵隊長として、兵団長として、父親として、そして夫として…アッティリオはたくさんの責務を背負ってる。わたしは初め、一緒に背負うのが夫婦だと思ってた…でも、それは間違いだったんだよね。むしろその逆…下ろした時にこそ、わたしがそばにいてあげなきゃ。それこそがわたしの役目なんだよね!

 

 

 

そして今…アッティリオは全ての荷を下ろした。なのにわたしはあなたのそばにいてあげられない…今が一番そばにいて欲しいはずよね?どうして先に逝っちゃうのよ…置いていかないでよ…ねぇ、アッティリオ…あなたのそばにいたい……本当はわたしの方があなたを必要としてるんだって…言わなかった?

 

1年半後…ようやくアッティリオに会えた。これからはずっと一緒だね。

山岳クルマン家に受け継がれてきた血脈と意志をわたし達は次の世代へ繋いだ。この先、何代も何十代も…連綿と受け継がれていく事を願う。