sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

10th◇兵隊長アリオト

 

「シャルル君が好きなの…」

「アリオトさんだって知ってるよね?僕たちはお互い後継ぎ同士…それは許されないって」

「ごめんね、困らせるつもりはないの!本当にごめん…」

 

シャルル君は山岳ナセリ家の後継ぎで、私のひとつ年下。幼い頃から一緒に遊んできた、いわゆる幼馴染み。そして私は…山岳クルマン家の次女、だけど今は山岳兵隊長。本来なら姉が後を継ぐはずだったのに、姉は恋人の夢を叶えるため、私に継承権を委ねて山を降りた。

あの時は姉を応援したかったし、シャルル君にこんな感情を抱くことになるなんて思いもしなかった。だから後継ぎになったこと、後悔なんてしてない…だけど…もし……あの時…姉の申し出を断っていたら………私たちはどうなってたのかな…

 

 

「アリオト?元気ないな、どうかしたのか?」

「あ、ロベルト君。別に…どうもしない……」

「じゃ、釣りにでも行かないか?俺がアリオトを元気にしてやる!」

はぁぁ………ロベルト君にまで心配されてちゃダメよね。

 

ロベルト君はナトルに通ってる頃から弟のようにかわいがってきた、ふたつ年下の男の子。今年成人して、なんか…こう…色気があるって言うか…年下のくせに私より大人びていて、シャルル君とは見た目も性格も全然タイプが違う。

 

 

 

10日ほど前、お父さんが引退し私は山岳兵隊長となった。そろそろ結婚の二文字と真剣に向き合わなきゃいけない。なのに…結婚どころか恋人すらいない。兵隊長なんて…肩書だけで何もかもまだまだ未熟者。やっぱりお姉ちゃんが継いだほうが良かったんじゃない?私は武術も…恋愛も…お姉ちゃんには敵わないよ……。

 

 

「アリオトおはよう。釣りに行こうよ」

「おはよ。ロベルト君って、いつも釣りに誘うよね?そんなに釣り好きなの?」

「まぁ…そうだな。嫌いじゃない」

で、私を誘いに来るロベルト君の後ろには…女の子が列をなしてロベルト君を追いかけて来る。

「私じゃなくて、あの子たちを誘ったら?」

「俺はアリオトと釣りがしたいんだ!」

私の手を引いて、女の子のたちの間をズンズン進むロベルト君。『オバサンのくせに』って声が聞こえてきそう…じゃなくて!私はロベルト君のこと、そんな対象として見れないよ。

 

 

とうとうシャルル君に恋人が出来た。本当にもう忘れなきゃ!

そう思ってるのに…デートしてるとこなんて見たくないのに…それでも私はシャルル君を追いかけちゃう。今日は水源の滝でデートなのね…

 

「アリオト!ちょっと来い」

突然目の前に現れたロベルト君に手を掴まれ、強引に引っ張られる。

「痛い!離してっ!」

聞こえてないの?ロベルト君…怖いよ?どうしたの?

 

「そんなにアイツが好きなのか?どうにもならないって分かってるだろ?」

「ロベルト君には関係ない!放っておいて!!」

「関係あるんだよ!ちゃんと俺を見ろよ…俺は………ずっとアリオトのことが好きなんだ!そんな顔したアリオトなんて見たくない。俺がアリオトを笑顔にする!だから!!!」

「ムリ!だって…だってロベルト君、人気者だし…私の方が二つも年上だし…私なんかロベルト君に釣り合わない!」

「は?釣り合うとか釣り合わないとか関係ないだろ!好きか嫌いか聞いてんだけど?」

「好き?いやいやいや………」

「嫌い………か?」

「待って!展開が急すぎて頭が追いつかない…ごめん、好きだとは言えない……今までそんな風に考えたことなかったし…」

「なら、考えろよ!一日やる。明日…返事もらいに来るから」

 

もう、訳わかんない!何なの?ロベルト君が私を?

…………ロベルト君のこと…好き?嫌い?……好きかどうかはよく分からないけど、嫌い…ではない。でもシャルル君に対する気持ちとは…明らかに違う…よね…。

 

 

 

「で?答えは?」

年下のくせに、思いっ切り上から目線。ロベルト君って私のこと年上だと思ってないよね!何か癪に障るけど、それがロベルト君らしくて…だからこっちも飾る必要なんてなくて…

「………よ……よろしく………お願いしま………す」

「……………あ、えっと……家まで送るよ」

私の手を引いて山道を登って行く。後ろからはロベルト親衛隊が付いて来てる…あぁ、私…早まったかな?

「アリオト、明日デートな。それと…『お前ら付いて来んな!』」

今…山岳の家3には私とロベルト君、それとロベルト君目当ての女の子が3人。こんな状況下で構うことなくキスしてくるロベルト君。私これからどうなるのかしら…

 

ロベルト君はグイグイ私を引っ張ってくれて、あっという間にクルマン家に婿入りしてくれた。二児の父になり、山岳兵としてずっと支えてくれた。

 

髪も白くなり、私は長男ヴィタリに兵隊長を引き継ぎ、ようやく引退した。

兵隊長、兵団長としてずっと走ってきた。急に全てを下ろしたら、ぽっかり穴が空いたみたいで…

「アリオト、釣りに行くよ!」

「相変わらず釣りが好きねぇ」

「まだ分かんないの?釣りなんてどうでもいい…アリオトと一緒にいたいだけ…そろそろ俺だけのアリオトになってよ」

「うん…もちろん♪」

私の心はロベルト君が埋めてくれる。ずっとそうだったな…どんなときでも気付けば隣にいてくれた。だからこれからは私がロベルト君の隣にいる…ううん、いさせてね!