13th◇告白まで
〜ロビー殿下視点〜
「あ、あのさ……」
「ん?」
「二人で…どっか行かない?」
「……………………」
何で返事しないの?やっぱり僕じゃダメ?
断られるのが怖くて下を向いていた顔を恐る恐る上げ、彼女の顔を見る。小麦色の頬はほんのり赤く染まって…目が泳いでる?
「あの…ク、クルキス…さん?」
クルキスさんの眼の前で手をヒラヒラさせ『お~い』と声をかけると、目の焦点が合ってきた。そして僕を見るなり驚いた顔をして真っ赤になってクルッと後ろを向いた。パタパタと手で顔を扇ぎながら『ちょっと待って』と背中越しにうわずった声が飛んで来た。
(え?何、その反応。可愛いんですけど)
ほんの数秒だったかもしれないけど、返事が返ってくるまでに随分待たされた気がした。
「わかった、行くよ!」
僕たちは子供の頃から一緒で、幼馴染みと言うより『姉弟』って言ったほうがしっくりくる。多分…クルキスさんは僕のこと『弟』だとしか思ってない。そんな男から幸運の塔に誘われて、驚くのは無理もない。でも…全く男として意識してくれてなかったのはちょっと傷つく。だけど、あの反応は…勝算アリかも♪
「クルキスさんのことが好きなんだ。僕と付き合って欲しい」
「うん…。で、でも、なんでわたし?それに、なんで今日?」
「今日?ん~、それは…まぁ、こっちにも色々と事情がありまして…。でも、クルキスさんのことはずっと好きだった!この二年、好きな人なんか作るな〜って念を送ったりしてたけど、毎日毎日、気が気じゃなかった」
「そ、そう…。なんか…全然気が付かなかった…ゴメン。でも、殿下の気持ちは正直…嬉しい。わたしもロビー殿下のことが…好き」
もちろん成人してすぐ誘うつもりだった。でも、騎士隊長になったクルキスさんを今の僕じゃ守れない…いや、逆に僕のほうが守ってもらう立場。不甲斐なくて誘う勇気が出なかった。
そんな時思い出したんだ。おじいちゃんがエレナ前騎士隊長を見て、言ってたこと…。
『騎士隊員に直接魔物から守ってもらったことはない。守らなくて済むように未然に事を済ませるのが騎士隊の役目だ。そんな第一線で戦う騎士隊員だからこそ、支えてくれる人が必要なんだよ。それは同志でも友人でも家族でもいい。まぁ、形はどうでもいいんだ』
でも、僕は友人じゃぁイヤなんだ。そう気付いてしまったら、居ても立っても居られなくなった。それが今日…今だよ。
「じゃぁ、家まで送るよ」
「あ、ありがと」
この後、逆ギレされるんですけど…ね。
なんで挨拶にも来ないの?とか、急に目線が変わって変な感じがする!とか、勝手に大人になってる!とか……
耳まで真っ赤にして文句を言うクルキスちゃん、もう…可愛いしかないんですが。
「そんなこと言ってると、口…塞ぎますよ!」