12th◇新成人
「ルクバ、成人おめでとう!早速なんだけど今からアウドラに会ってくれない?」
「は?今から?な、なんで?」
「いいから、いいから!はい、いってらっしゃ〜い!」
メラク姉さんに急かされ玉座の間を出る。ほんの数秒前に大人になった私に、玉座の間にまで来て、いきなり女の子を紹介してきた姉…。いったい何考えてるんだ?そういうのはさ…成人して何年か経っても恋人ができない人に紹介すればいいだろ?私はまだ遊びたいって言うか、しばらく恋人を作るつもりないんだからさ…
姉さんの視界から消えたと同時に、私は王太子殿下の所へ走った。殿下とは同級生で、さっき一緒に成人した。ナトル時代から親友みたいなもんだけど、大人になったからには正式に『親友』になりたい。式が終わったら誘うつもりだったのに、姉さんが邪魔するから見失ったじゃないか…
「殿下、一緒にご飯でもどう?」
「ちょうどよかった、俺も誘おうと思って探してたんだ」
殿下とは無事『親友』となった。あとはヤニックさんとエクトルさんだな。今日は遅いから、明日にするか。
翌朝
そう言えばヤニックさん、今日誕生日だな。よし、何かプレゼント買っていこう。ヤーノ市場をウロウロしてると…
「おはよう。クルマンさんですよね?あなたを紹介されて来ました。シルヴィと言います、よろしくね」
「あ…はい、よろしくお願いします………」
え?メラク姉さんが昨日紹介した人と違うよね?今度は誰の紹介なんだよ!全く…うちの家族の誰かなんだろうけど、まだ成人したばかりなんだから、しばらく自由にさせてくれないかな…
そんな事よりヤニックさんとエクトルさんはどこかな?運よく二人とも割と近いところにいた。二人一緒に誘えればいいのになぁ…。さすがに2食はキツかったが、無事二人とも親友になれた。
「あの…」
今度は何?
「あなたに奏士の後任として神殿勤めをお願いしたいのですが、いかがですか?」
「は?……え、えっと…私ですか?」
「はい。クルマン君に是非ともお願いしたい!どうかお願いします!」
まぁ…今年はエルネア杯で武術職の募集もないしな…
「私でよければ引き受けますよ」
「では早速、神殿へ参りましょう」
そんなこんなで奏士になった。せっかくだし、家を出て一人暮らしでもしてみるか!
奏士居室に荷物を置いていると…
「ルクバ君に紹介したい人がいるの!アスセナって人に会ってくれない?」
タルフ姉さんまで…
「悪いけど、まだ恋人とかいらないから」
「別に恋人になれって言ってるんじゃないわ!会うだけでいいから。ね、お願い!ね?」
「私…そんなにモテない?そんなに心配?もう、放っておいて!私にだって女の子の友達くらい、ちゃんといるから!!」
啖呵を切って居室を出た。
「ルクバ、今からモニカって人に会ってこい」
「ヤニックさんまで…やめてよ。なんでみんな紹介してくるんだよ…私ってそんなに奥手に見える?」
「奥手?お前が???」
「だって、成人した途端…姉さん達やヤニックさんまで次々と女の子紹介してくるからさ……私には恋人なんて作れないって思ってるんでしょ?」
「違う!ルクバを心配してるんじゃなくて、向こうが紹介してくれって頼みに来るんだ。こっちだって迷惑してるんだ。だからさぁ、さっさと相手決めてくんない?なんなら結婚してもいいんだぞ!」
「け、結婚?!ムリムリムリムリっ!そういうの、まだよく分かんないし、結婚どころか恋人だってしばらく作るつもりないから!」
そんなやり取りをしてると、後ろから声を掛けられた。
「ルクバ!あ、あのさ…ふたりでどっか……い、いかない?」
目の前でヤニックさんがニヤニヤしながら見てる。あーもう!今の会話、聞こえてたでしょ?それでも誘って来るって…どういう事?
「ごめんなさい!」
相手の顔も見ずに断わって走り出した。目の端に青髪が映る。ま、まさか………リズ…さん?どうしよう…傷つけちゃったかな?でも、今はまだ考えられないよ…ホントにごめん!
はぁぁぁぁ、成人してまだ2日なのに色んな事が起こり過ぎ!私は…いったいこれからどうなるんだろ…。