12th◇憧れと恋
「そんなに兄貴の事が好き?」
「だって…子供の頃からずっと憧れてるの!ずっとルクバのお嫁さんになるって言ってきたし、ルクバと結婚する事はアタシの中で決定事項なの!」
「ハァ…そう。でもさ、兄貴は結婚する気ないよ。メロディと結婚しないって事じゃなくて、誰ともね」
「今はそうかもしれないけど、来年とか3年後とか…分かんないでしょ!」
俺の兄貴はモテる。それは認めるが、兄貴は女に興味がない。興味がないクセに当たりがいいから周りは勘違いする。俺から見れば最低な男なんだよ、兄貴は。
そんな兄貴に惑わされてるひとりがメロディ。俺はメロディが泣くことになると思って助言してやってるのに、まったく聞く耳を持たないんだ。それがもどかしくてイライラさせられる。
「また幸運の塔に誘ったの?無駄だっろ?兄貴は誰の誘いも受けないって」
「だって…ルクバを誰かに取られちゃったらヤダもん!」
「それは無いって…兄貴は誰とも結婚どころか付き合う気もないんだからさ」
「お、ナオス君!」
「何?」
「ご機嫌斜めみたいだね、何かあった?」
「その原因の張本人がそれを言う?自覚ねぇのかよ…」
「お兄ちゃんが話聞くよ♪どうしたの?」
「………あのさっ、メロディの事どうするつもり?結婚する気ないなら、ちゃんとそう伝えるべきだろ!」
「ふ〜ん、ナオス君はメロディさんのこと好きなんだね!そっかそっか♪お兄ちゃんに任せて!」
「そんなんじゃない!バカ兄貴っ!」
本当に兄貴は何にも分かってない。自分が苦しめた人がどんだけいるか…考えた事もないんだろ。メロディはその中のひとりになりそうなんだ、幼馴染みとして放って置ける訳ないじゃないか!
「おはよ、こんな朝早くにどこ行くの?(どうせ兄貴の所だろ…)」
「ナオス、おはよう♪そんなの…教えない」
「いい加減にしろよ!やめとけって何度も言ったよね?泣くことになるのはメロディだよ、もう諦めろよ!俺がメロディに似合ういい男…見つけてやるから」
「っ!! ナ、ナオスはいい男じゃないの?…本当に分かんないの?アタシはナオスに会いに来たの!ナオスだって毎朝アタシに会いに来てくれるでしょ?………それって、そういう事じゃないの?アタシの勘違い?ねぇ!」
何も答えられなかった。メロディごめん…兄貴ばっかり責めてきたけど、俺も兄貴と同類だ。何も分かっちゃいなかった、自分の気持ちすら…。
「あ、あのさ… 二人でどっか…行かない?」
「もちろん♪」
俺はずっとメロディの事が好きだったんだ。だから…メロディが兄貴を追い掛ける事に苛立ってたんだって分かった。
「メロディが好きだ!俺と…俺と付き合って欲しい」
「アタシもナオスが好き!これからもよろしくね」
「本当に?兄貴の事はもういいの?」
「ルクバの事はただ憧れてるだけだって分かったの。いつも一緒にいてくれたのはナオスだった。近すぎて見えてなかったのよ、きっと。これからもアタシのすぐそばにいて欲しいって思うのは…ナオスなんだって気付いたの」
これからもメロディの初恋の相手が兄貴だと思うと多少なりとも苛つくんだろうな…。でも、これからは自分の気持ちに嘘はつかない。メロディを愛してるんだ…その気持ちはちゃんと伝える。だからずっと俺のそばにいれくれ!