sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

wilma◇2.告白(ダミア編)

成人式。僕はリネミーより一足先に大人になった。
「ダミア君、成人おめでとう。はい、約束のプレゼント…あげる!ごめんね、こんなものしか用意できなかった。………なんか変な感じ。ダミア君…別人みたい。山岳服だからかな?」
リネミーが差し出したのは、ちょっと歪な“いむぐるみ”…らしきもの。明らかに手作りだ。
「ありがとう。嬉しいよ!手、見せて…」
おずおずと出した小さな手には絆創膏が何枚も張られてる。
「痛くない?」
「うん、大丈夫。もっと上手に作れると思ってたんだけど…」 
「いや、上手に出来てるよ。リネミーありがとう、大切にする」
リネミーと話していると、横から声を掛けられる。
「ダミア君…あのさ…ふたりでどこか行かない?」
「…えっと、ごめん。今日は遠慮しておく…」
仲良かったかな?名前すら思い出せない女の子に誘われ、正直困った。それもリネミーの前で…。


「ダミア、旧時代の坑道跡に行かないか?」
「お前と?大丈夫かな…いきなりそんな所…」
「そうだな…お前でもやっぱ恐いか」
「昨日まで小道にしか入れなかったんだぞ!危ないだろ?誰か…山岳兵の人とか一緒ならいいけど…」
「俺たちも山岳兵だけど?」
誘ってきたのは一緒に成人した幼なじみのロング・シュワルツ。僕と同じく第二子のお気楽山岳兵だ。
「そうだけど…じゃぁ、行けるところまでな」
結局二人とも途中で気を失った…。


そのロングに恋人が出来た。ロングもリネミーに好意を寄せていたが、脈がないと分かると、あっさり他の子とくっついた。
「ダミア、俺が誰か紹介しようか?」
「は?僕は…まだ恋人なんか要らないし…。それに、お前に紹介してもらいたくなんかない!」
「ふーん、リネミーだろ?…待つつもりなのか?」
「いや、そんなつもりは…ない」
大人と子供の隔たりは大きい…卒業してからあまりリネミーとは会ってない。でもリネミーとあの人は毎日のように会ってた…リネミーはあの人には会いに行くけど、僕の所には来ない…それが現実だ。


年が明けた。
リネミーが成人する…。この1年で彼女に会ったのは数えるほど。会ってどうするつもりなんだ?頭ではそう思っているのに、足は玉座の間に向かっている。エルネア城に入った所で成人式か終わったらしく、玉座の間から新成人やその家族が、わらわらと出てくる。

すぐに見つけた…リネミーだ。想像していた以上に綺麗になってる。声を掛けようとしたが、人が多くて近づけない…
「ダミア君、ハーブでも摘まない?」
「あ、ごめん…。ちょっと用があって…」
少し目を離した隙に、リネミーを見失った…。そのあとも探索や魚釣りに誘われ、結局その日、リネミーには会えなかった。


翌朝、奏女居室にリネミーを訪ねた。リネミーは前任者から役目を引き継いで奏女になっていた。
「リネミーおはよう。これからどこ行くの?」
「ちょっと人に会いに…」
あの人の所か…
「告白でもするの?」
「えっ…なんで…分かったの?」
「やっぱり…。ずいぶん緊張してるみたいだから…成功すると良いね」
僕は…何言ってるんだ?バカじゃないのか?トボトボと宛もなく歩いた…気がつくと僕は幸運の塔にいた。……えっ?リネミーの声が微かに聞こえくる。
「………が好きなの!」
「ごめん、恋人いるんだ。それに、君は…娘のような存在なんだ…ごめんな」
リネミーが振られた?
「待ってアル…そんなこと知ってる!それでもアルが好きなの!アルじゃなきゃ…ダメなの…」
リネミーの悲痛な声が聞こえた。僕の方が泣きそうだ…。


僕はアルと呼ばれたその人の後を追いかけた。
「こんにちは。突然すみません、失礼を承知で来ました」
「君は…昔会ったね?まだ君が子供の頃…」
「はい。あの…リネミーのこと…どうしてもダメなんですか?」
「ダミア君だったね。君はリネミーが好きなんだろ?君にとってはチャンスなんじゃないの?」
「っ、…そんなこと思ってない!!」
僕は掴みかかった。思いっきり睨み付けたのに、その人は笑ってた…
「俺とリネミーは親子ほど年が違う…。もし俺とそんな関係になっても、彼女と一緒に過ごせる時間は短い…。リネミーだけじゃない…俺は誰とも結婚なんてするつもりはない」
「今の恋人は?結婚する気もないのに付き合ってるんですか?」
「彼女は…全て了解してくれてる。俺は…先に逝くんだ。残された者が自由に生きられる方がいいんだよ…ひとりで淋しい思いをして欲しくないんだ」
「だから…受け入れないんですか?そんなの優しさじゃない!だったら…僕が、あなたが居なくなった後、僕が友人としてリネミーを支える!ずっと側で支えるから…リネミーの気持ちに応えてあげて下さい…」
「ダミア君…君こそリネミーを愛してるんだろ?何故そこまでする?自分のものにしたいと思わないのか?」
「僕は…リネミーの笑顔が好きなんだ!リネミーが笑っててくれるなら、それだけでいい…。リネミーが幸せなら…」
「嘘だ!そんなキレイごと…。君が傷付きたくないだけなんじゃないのか?」
「それはお互い様でしょ?」
「じゃぁ、君の気持ちを正直にぶつけてこい!そしたら俺も正直になるよ」


「リネミー、ふたりで出かけない?」
「ごめんなさい。私…行けない。ごめんなさい!」
何度誘っても同じ答え…僕は告白すら、させてもらえないのか…。

「スウィアさん、僕は…出来ることはやりました。だから…」
僕の肩をポンっと叩き
「ありがとう…」
そう聞こえた。小さな、小さな声だった…