sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

wilma◇1.出会い(ジミー編)

「ジミー、もっと愛想よくしなさいよ。いっつも仏頂面で…可愛くないわよ!だから恋人も出来ないんじゃない?」
「うるさいなぁ、今は強くなるのに忙しいんだよ!恋人なんて…面倒なだけだよ!」
「はいはい…。今日も探索行くの?」
「あぁ。先にヤーノ市場に寄ってから行くよ」
母との朝のやり取り…毎日同じような会話をして家を出る。

 

「すみません…」
突然声を掛けられ振り向くと、初めて見る旅人の女の子だった。
「あの…どこか食事が出来るところ…」
その時、彼女のお腹の虫が盛大に鳴いた。
「アハハッ!ずいぶんお腹空いてるみたいだね?」
旅人さんはフードを思いっきり引っ張って、真っ赤になった顔を隠した。
「あ、ごめん…。付いてきて」
僕はそれ以上どう言葉を掛ければいいのか分からず、ウィアラさんの店まで黙って連れて行った。

「ウィアラさん、おはようございます」
「あら、ジミー君おはよう。珍しい!あなたが女の子連れて来るなんて、デート?」
「ち、違いますよ!さっきヤーノ市場で会ったんですが、迷ってるみたいだったので連れてきたんです。それじゃ」
僕はテーブルにパンケーキを置いて店を出た。そのまま瘴気の森へ急ぐ。そして一日中探索に明け暮れた。龍騎士になる夢を叶えるため、体を鍛える日々を送っていた。


「今朝の船で?」
「はい…」
「どうぞ召し上がれ」
「いただきます。うわあぁ美味しい!ふわっふわで甘くって、あぁ…しあわせ~♪」
「それはジミー君からよ。しばらく滞在するんでしょ?部屋は6号室を使って」
ウィアラさんから鍵を受け取り荷物を部屋に置いた。あっ…お礼、言ってない。
「ウィアラさん、さっきの人…ジミーさん?どこにいらっしゃるか分かりますか?」
「じゃぁ、導きの蝶をあげるから使ってみて」

 

「使ったけど…会えないじゃない!どこにいるのよ?……それより、ここどこ?」
蝶に導かれ、どこをどう通って来たのか分からない。薄暗くてシーンとした森の中…急に不安が襲う。
「どうしよう…帰り道はこっちかな?あれ?えっと…」
「どうかしましたか?」
「よかった~。すみません、ここどこですか?」
事情を説明すると、ジミー君は旅人では入れない所に居るらしい。
「宿まで送りましょうか?」
「大丈夫です、ありがとうございました」
結局、その日は夕刻になっても会えなかった。

 

翌朝、城下のジミー君の家を訪ねた。家の前まで来たものの、何だか緊張してきた。ノックするか躊躇しているとバンッと扉が開いた。

「じゃあ、行ってきます」
「お、おはようございます。あの…昨日はありがとうございました。パンケーキまでいただいたのに、お礼も言わずに…」
「そんなこと気にしなくていいよ。…わざわざ来なくてよかったのに」
「…会ってお礼が言いたくて…やっぱり迷惑でしたね…ごめんなさい!」
「??迷惑?……違っ、ごめん…そんなつもりじゃないんだ!待って!!」

走って逃げ出した私を、ジミー君が追ってくる。
「待って!」
あっという間に追い付かれ、手首を掴まれ、引き留められる。
「離して!」
「ごめん…迷惑じゃないから!ただ…これから君に会いに行くつもりだったから…」
「えっ?」
「あっ、いや…何か困ってないか心配で…だから、わざわざ来なくても僕が会いに行ったのにって…。ねぇ、これから一緒に釣りでもしない?」
「うん…」

 

「ねえ、お母さん見た?何?今の何?アヲハル??キャーッ、お兄ちゃんったら!」
「ジミーもあんな顔するのね!あの旅人の子、小さくって華奢で守ってあげたくなるような感じよね」
「お兄ちゃん、いつの間に?さっきまで恋人なんか要らないみたいな事に言ってくせに。ま、いいや、とにかく頑張れ~!」
「ジミーもいい年だし、そろそろ結婚して孫の顔でも見せて欲しいんだけどね」

 

それからジミー君とは毎日会って、いろんな話をした。あまり感情を表に出さない人だけど、私にはジミー君の優しさが伝わってくる。

 

「はぁぁ…」
「どうした?さっきから『心ここにあらず』って感じだな?」
「あ、ごめん」
「何だよ!悩んでるんだろ?話してみろ」
「この前たまたま知り合った人なんだけど…初めは面白い人だなって思ってたんだけど、最近…彼女を直視出来ない…それでもずっと見ていたくて、目が勝手に追いかけて。でも目が合うと反らしてしまうんだ」
「…………お前…いくつだよ?で、相手は誰?」
「この前入国した旅人さんで…」
「じゃあ、ウダウダしてると二度と会えなくなるよ?それでもいいのか?」
「二度と?………それはイヤだ」
「ナトルのガキだってそれが『恋』だって知ってるよ!」
「恋?えっ?そうなの?僕が?」

「マジで言ってる?…ニブいにも、ほどがあるよ…。好きだから気になってるんだろ?そうじゃなきゃため息なんて出ないし!」
「…………瘴気の森行ってくる」


好きって僕が?あの娘は…どう思ってるんだろ?僕のこと…好きになってくれるかな?この年になるまで告白したことも、されたこともない。恋愛なんて邪魔だとしか思ってなかった。でも今は違う…。探索よりあの娘に会いたい…あの娘の笑顔が見たい!
『好き…なのか?そうか、好きなんだ!』
妙に納得したが、どうすればいい?

 

先日仲良くなったキュカちゃんとランチ。
「ジミー君のこと好きなんでしょ?告白しないの?」
「…ジミー君が私の事どう思ってるのかわかんなくて…もし断られたら、私…生きていけないかも」
「大袈裟!たぶん大丈夫だと思うけどな…。じゃぁ告白して断られたら出国するって、どう?」
「へっ?」
帰化、迷ってるんでしょ?待ってるだけじゃ後悔することにならない?」

ランチを終えキュカちゃんと別れた。噴水通りをプラプラと歩きなから頭に浮かぶのは…やっぱりジミー君のこと。

「こんにちは!よかったら一緒にハーブでも摘みませんか?」
「??……あっ、森で!あの時はお世話になりました。助かりました」
「よかった、覚えててくれたんだ!」
声をかけてくれたのはひとつ年下の男の子。ジミー君を探して森をさまよってた時に助けてくれた人だ。牧場でハーブを摘みながら他愛もない世間話。最近ジミー君の事ばかり考えて悶々としてたから、何でもない会話が楽しい。

 

ようやく手に入った帰化申請書を握りしめ、あの娘を探した。見つけた!遠くからでも、顔なんか見えなくてもわかる。高鳴る心を落ち着かせ、声を掛けようとした瞬間…君の笑顔が見えた!でも君が笑顔を向けた先には…まだあどけなさの残る男の姿があった。ピタリと足が止まる…一緒に心臓まで止まった気がした。
「あ、ジミー君!」
僕に気づいた君は、満面の笑みで僕に向かって手を振って近づいてきた。怒りもに似た、なんとも言えない感情が込み上げてくる…彼女の手を掴み強引に引っ張った。 
「どうしたの?ジミー君?痛いよ!」

僕は無理やり幸運の塔に連れて来た。塔の壁に追い込んで、彼女の顔を見下ろした。よほど怖い顔をしてたんだろうか?彼女の目からポロポロと涙がこぼれ落ちた。
「っ!!ごめん!僕…何した?」
やっと我に返った。
「どうしたの…?いつものジミー君じゃない…」
「本当にごめん!」
「待って!他に言うことないの?」
どんな顔していいのか分からず、立ち去ろうとする僕の背中に抱きついてくる。
「冷た!」
「あ、ごめん…。もっと冷たくしてやる…」
離したくない…やっぱりずっとそばに居たい!彼女をぎゅーっと抱き締め、覚悟を決める。
「君が好きなんだ…ずっと…この国で暮らさない?」
「うん…私もジミー君が大好き!」
握り締めてグチャグチャになった申請書を差し出す。
「何それ?使えるの?」
「あ…どうだろう?ダメかな?」
「ふふっ、ありがと。これからよろしくね」