sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

10th◇2.賭け

「リュラエちゃん、明日選抜の試合なんだ。良かったら見に来ない?」
「もちろん行くよ!試合、頑張ってね」
明日の試合に僕の全てを賭ける。負けたら…龍騎士の夢は諦める。勝ったら…リュラエちゃんを諦める。こんな賭けみたいなことで自分の将来を決めるなんてどうかしてる。だけど…だけどそれが一番、僕自身が『納得』出来る気がした。

 

そろそろ試合の時間だ。練兵場にはリュラエちゃんも来てくれていた。まるで決勝戦かと思うくらい緊張してる。対戦相手の方が強いことは分かってる。でも簡単に負ける訳にはいかない!

「それでは、試合はじめ!」
速攻で攻められる…くっ、まだ防御の姿勢も取れてないのに…必死で堪えるが堪えきれない…
「そこまで!!」
僕は膝をついた…負けた…
「くっそーッ!!!」

完敗だ。手も足も出なかった…所詮今の僕の実力はこんなもんなんだよな。負けたのに晴れやかな気分なのは、きっと僕が僕自身の気持ちを受け入れたから…。

「試合、残念だったね…。アントニオ、今から探索行こう!」
リュラエちゃんに誘われて探索に行くことになった。やっと幸運の塔に誘う勇気が持てたのに…

「また来年も挑戦するでしょ?アントニオはスゴいね。夢に向かってまっしぐら!羨ましい。あたしは夢なんて持てなかった。生まれたときから決まってた…。だからアントニオの夢をあたしも応援したい!良いでしょ?」
「…強くなりたいだけだよ。強くなりたくてジタバタしてるんだ!リュラエちゃんに応援されたら…僕はどうすればいいんだよっっ!こっちの気も知らないで…僕はリュラエちゃんに応援なんかして欲しくない!」

夢は諦めるって決めたのに…そんなこと言わないでよ…僕は理不尽にリュラエちゃんを責め立てた。
「ご、ごめん…」
「じゃぁ…お詫びに僕の恋人になってよ!」
「えっ?…冗談…だよね?」
「冗談なんかじゃ…ないよ…」
気付いてしまった感情は溢れだし、もう抑えきれない…リュラエちゃんを引き寄せ、腕の中に閉じ込めた。このまま…離したくない!
「僕のこと…真剣に考えて欲しい。今日はもう遅いから…明日、ちゃんと幸運の塔に誘うよ…」
「ま、待って…アントニオ。今までそんな素振り見せなかったじゃない…急に…ズルい…よ………」
「リュラエちゃんが気付かなかっただけでしょ?僕は子どもの頃からずっと君のことが好きなんだよ……」
えっ?…ずっと?好き?自分の口から出た言葉に驚いた。でも納得した。なーんだ!やっぱり好きだったんだ。

 

翌朝、約束通りリュラエちゃんを幸運の塔に誘う。
「リュラエちゃんが好きなんだ!僕と付き合って下さい!」
「あたしも…好き………です」
「本当に?聞き間違いじゃないよね?リュラエちゃん…もう一回言って!」
「アントニオが…大好きだよ!」
「や、やった!今日は僕の誕生日なんだ!最高の誕生日だよ!」
「ごめん、知らなかった…お誕生日おめでとう!」
「プレゼントはリュラエちゃんのキスでいいよ」
冗談のつもりだったのに、顔を真っ赤にしてうつむいたリュラエちゃん…マジでかわいい…本当に僕の恋人になったんだよね…?
「リュラエ…ちゃん…夢じゃないよね?」
目が合った瞬間、もう抑えきれない…半ば強引に唇を重ねた。さすが山岳兵、抱き締めたリュラエちゃんは小さいけどしっかり筋肉が付いている。リュラエちゃんは気にしてるみたいだけど、僕は好きだよ。だって、リュラエちゃんが努力してる証拠だから。

将来リュラエちゃんは山岳兵団を率いていく立場になるだろう。そして龍騎士にだってなれる人だ。

「僕はリュラエちゃんとずっと一緒にいる。覚悟しといてね!」

「アントニオこそ覚悟しといて!浮気なんかしたら容赦なく叩きのめすわよ」

軽口を言い合いながら、これからの幸せな日々を確信し、もう一度キスをする。

でも、このとき僕たちはお互い、大事なことを伝え合うのを忘れていた……