sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

04th◇1.王家のしきたり

わたくしは将来この国の女王になる。『そんなの嫌よ!』と、泣こうが喚こうが決して変わることのない運命。国王の長子として生を受けた…ただそれだけのことなのに…ね。

 

彼と出会ったのは、わたくしが五歳の誕生日を迎えた頃…、播種の日を終えたばかりの寒い日。旅人のその人は、当然わたくしが王家の世継ぎであることも、王家には決まり事があることも知らない。

噴水広場を歩いていたわたくしにたまたま声をかけたのよね。そんな出会いだったけど、わたくし達はすぐに仲良しになったわ。大人と子供だから挨拶を交わすことしか出来ないけど、それでもわたくしにとっては大切な…憧れの人だった。

 

 

年が明けた。早朝から王家の一員として新年祝賀会に参加し、昼1刻からの成人式に備える。パパと、女王陛下であるママに挨拶をして、卒業式と成人式を迎えた。王太女として恥ずかしくないように、一日も休まずに通い、主席として代表の挨拶をした。

 

式を終えた瞬間、魔法でも掛けられたかのように一気に大人の身体に…不思議…意識はさっきまでと何も変わらないのに、視線が高くなり、手足が長くなって、胸だって…なんだか恥ずかしいわ。

まだガヤガヤとした玉座の間から抜け出し、居室に戻る。鏡の前に座って、まじまじと自分の顔を覗き込んだ。ちゃんと大人になってるのかしら?わたくしは…カワイイ?それともキレイ?顔をしかめてみたり笑ってみたり…。父親似だと言われてきたが、父は中性的でキレイな顔をしている…それに比べて、わたくしは普通よね。

結婚して世継ぎを誕生させる。それがわたくしに課せられた使命の一つ。こんな平々凡々な容姿のわたくしにも愛する人、そして愛してくれる人が現れるのかしら?

 

成人するとわたくしは名前では呼んでもらえない。『殿下』そしていずれは『陛下』と呼ばれるのよね…なんて冷たい響きなのかしら…

そしてもちろんあの人も『殿下』と呼ぶようになった。わたくしは…もう子供じゃない。彼のそばにいる時の、この胸の高鳴りが何だか知っているわ。だから…もう彼とは会わない、そう決めたの。わたくしは旅人では付いて来れない場所へ逃げた。そうやって2日間は彼と会わずに済んだんだけど…、とうとう彼は朝早くわたくしが出掛ける前に王家の居室を訪ねてきたの。釣りでもしようと強引に手を引かれ連れ出される。

 

彼は…『殿下のそばにいたいから、この国で暮らそうと思う』そう告げてきた。すごく嬉しかった…だけどわたくしは機械的に事実だけを伝え、逃げ出した。程なく彼はわたくしの前から姿を消した…