sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

12th◇主導権

エレナさまと出会ってから、私の価値観は一変した。それまで龍騎士の称号を得た自分より強い人がいるなんて考えもしなかったし、自分が最強だと思っていた。その私が彼女にあっさり叩きのめされたんだ…。

エレナさまは旅人で、見た目はミステリアスな美女。ただ…いつも神経を尖らせてるようで、全く隙がない。この国は平和だし、そんなに肩肘張らなくても大丈夫なんだけどな。それを分かって欲しくて釣りやら採取やらに連れ出した。

これまで全くと言っていいほど女性に興味がなかった私が初めて興味を持ったんだ。最初は武人として興味を持ったんだけど、いつの間にか女性としてエレナさまに惹かれていた。結婚する気も恋人を作る気もなかった私が、生まれて初めて『ずっと一緒にいたい』と思ったんだ。

 

「エレナさまのこれからの旅路に………あ、あの!これからはこの国で一緒に過ごしませんか?」

年の瀬にとんでもない事を口走った。まだ告白すらしていない相手にプロポーズまがいの事を言ったんだ…。慌てて取り消したけど、そんなの後の祭り。でも、これで自分の気持ちがハッキリした。

 

気付いてしまうと、逆に気恥ずかしくなって…どう接すればいいのか分からなくなった。いい年して初恋かよ!って言われそうだが、実際…恋愛初心者なんだ。人気者だとか、モテるだとか言われ、その気になって軟派な男の様に振る舞ってきたが、本当はその辺のナトルに通う子供と大差ない…。

エレナさまを幸運の塔に誘いたい!そして『好きだ』と伝えたい。でも、断られたら…そう思うと中々言い出せなかった。

 

 

「あのさ…二人でどっか行かない?」

エレナさま…待って、私が誘うはずだったんだ!でも、断る事なんて私には出来ない。

「いいね♪」

告白はエレナさまからだったけど、この先は私がリードするからね。そう思ってたのに…

 

「ルクバさん、明日デートしない?」

「ルクバさん、デート行こ♪」

「明日もデートしようよ!」

もうっ!エレナさまに何もかも先を越されちゃう。決して待ってる訳じゃない、エレナさまが早すぎるんだよ…たまには私からも誘わせて。

 

そんなこんなで毎日デートを重ねて、楽しい日々を過ごしてる。まぁ、そうなると次第に『結婚』って言葉がチラつく。私もいい歳だし、この勢いに乗ってもいいんじゃないかと思うんだ。

「エレナさま、明日デート行かない?」

「もちろん♪」

初めて私からデートに誘った。だって明日は私の誕生日なんだ、そりゃあ…一緒に過ごしたいに決まってるじゃないか。

それともう一つ、決めてたことがある。誕生日にプロポーズしたいんだ。(本当はエレナさまの誕生日が良かったんだけど、間に合わなかった…)だから明日、神殿に誘うよ。エレナさまも楽しみにしてて♪

 

「ルクバさん、お誕生日おめでとう!今日はわたくしが料理を用意したから、たくさん食べてね♪」

エレナさまの手料理が所狭しと並べられたテーブルに付き、いつもの様に他愛もない話で笑い合いながら、料理をゆっくり味わった。

さて、そろそろ…鞄に忍ばせたエンゲージリングに手を伸ばす。

「ねぇ、ルクバさん。突然だけど、今からデートしない?」

待ってよ!だからエレナさま、早いって!!私の計画が…………

「いいね、行こう♪」

そう言うしかないだろ…エレナさまの落ち込んだ顔なんか見たくないし、させたくないよ。

 

結局、プロポーズもエレナさまからという事になった。終始エレナさま主導で事は運んだ。ま、いいか!どっちから誘っても、きっと結果は同じ。いや…エレナさまが引っ張ってくれたから、ここまで順調に進んだんだろうな。

 

 

結婚式は明後日。その前に、明日はエレナさんの選抜トーナメントの初戦だ。大丈夫だろうけど、一生懸命応援するよ!そして無事に入隊出来ると信じてる。(私はクビになりそうなんだが…)

 

 

 

ーおまけー

「あのねぇ、ルクバは…好きな人いるの?」

え………っと、ほんの数刻前に婚約したんだよ。ごめんねエルシーちゃん…でも、そう言ってくれて嬉しいよ。

「うん、大好きな人がいるよ♪明後日にはその人と結婚するんだ。エルシーちゃんもそう思える人にきっと出会えるよ」

 

 

12th◇憧れと恋

 

「そんなに兄貴の事が好き?」

「だって…子供の頃からずっと憧れてるの!ずっとルクバのお嫁さんになるって言ってきたし、ルクバと結婚する事はアタシの中で決定事項なの!」

「ハァ…そう。でもさ、兄貴は結婚する気ないよ。メロディと結婚しないって事じゃなくて、誰ともね」

「今はそうかもしれないけど、来年とか3年後とか…分かんないでしょ!」

 

 

俺の兄貴はモテる。それは認めるが、兄貴は女に興味がない。興味がないクセに当たりがいいから周りは勘違いする。俺から見れば最低な男なんだよ、兄貴は。

そんな兄貴に惑わされてるひとりがメロディ。俺はメロディが泣くことになると思って助言してやってるのに、まったく聞く耳を持たないんだ。それがもどかしくてイライラさせられる。

 

「また幸運の塔に誘ったの?無駄だっろ?兄貴は誰の誘いも受けないって」

「だって…ルクバを誰かに取られちゃったらヤダもん!」

「それは無いって…兄貴は誰とも結婚どころか付き合う気もないんだからさ」

 

 

 

「お、ナオス君!」

「何?」

「ご機嫌斜めみたいだね、何かあった?」

「その原因の張本人がそれを言う?自覚ねぇのかよ…」

「お兄ちゃんが話聞くよ♪どうしたの?」

「………あのさっ、メロディの事どうするつもり?結婚する気ないなら、ちゃんとそう伝えるべきだろ!」

「ふ〜ん、ナオス君はメロディさんのこと好きなんだね!そっかそっか♪お兄ちゃんに任せて!」

「そんなんじゃない!バカ兄貴っ!」

 

本当に兄貴は何にも分かってない。自分が苦しめた人がどんだけいるか…考えた事もないんだろ。メロディはその中のひとりになりそうなんだ、幼馴染みとして放って置ける訳ないじゃないか!

 

 

 

「おはよ、こんな朝早くにどこ行くの?(どうせ兄貴の所だろ…)」

「ナオス、おはよう♪そんなの…教えない」

「いい加減にしろよ!やめとけって何度も言ったよね?泣くことになるのはメロディだよ、もう諦めろよ!俺がメロディに似合ういい男…見つけてやるから」

「っ!! ナ、ナオスはいい男じゃないの?…本当に分かんないの?アタシはナオスに会いに来たの!ナオスだって毎朝アタシに会いに来てくれるでしょ?………それって、そういう事じゃないの?アタシの勘違い?ねぇ!」

何も答えられなかった。メロディごめん…兄貴ばっかり責めてきたけど、俺も兄貴と同類だ。何も分かっちゃいなかった、自分の気持ちすら…。

 

 

 

 

「あ、あのさ… 二人でどっか…行かない?」

「もちろん♪」

 

俺はずっとメロディの事が好きだったんだ。だから…メロディが兄貴を追い掛ける事に苛立ってたんだって分かった。

 

「メロディが好きだ!俺と…俺と付き合って欲しい」

「アタシもナオスが好き!これからもよろしくね」

「本当に?兄貴の事はもういいの?」

「ルクバの事はただ憧れてるだけだって分かったの。いつも一緒にいてくれたのはナオスだった。近すぎて見えてなかったのよ、きっと。これからもアタシのすぐそばにいて欲しいって思うのは…ナオスなんだって気付いたの」

 

これからもメロディの初恋の相手が兄貴だと思うと多少なりとも苛つくんだろうな…。でも、これからは自分の気持ちに嘘はつかない。メロディを愛してるんだ…その気持ちはちゃんと伝える。だからずっと俺のそばにいれくれ!

12th◇兵団長と騎兵

 

山岳リーグ戦最終日。わたしは全勝し来期も兵団長を任せられる事になった。兵団顧問の父に優勝の報告をしようと声をかける。

「父さん!優勝したよ♪」

「リズおめでとう!それはそうと大事な話がある。少しいいか?」

何?なんか嫌な予感がする…

「……俺はもう長くない。リズは兵団長としては立派になったが、家長としては心配が尽きない…。口うるさく思うだろうが…リットン家のためにも結婚して欲しい…」

「大丈夫よ…心配しないで。断絶なんてさせないから…だから、そんな弱気なこと言わないで……」

 

 

ルクバ君と距離を置くようになってから、騎士隊のアンヘル君と一緒によく探索へ行くようになった。彼も武術職だから、共感できる部分が多いし話も合う。何より、彼と一緒にいる時間が心地良い。でももし彼と結婚…ってなると、彼は騎士隊を辞めなきゃいけない。だから迷ってる、彼との関係を進めていいものか、そして未来を考えていいものなのか…。

 

「ねぇリズちゃん、ちょっと付いて来てもらえる?」

アンヘル君、いいわよ。で、どこ行くの?ゲーナの森?」

彼は『ははっ』って笑って困ったような顔したの。彼のうしろを付いて噴水通りから街門広場、そして幸運の塔…(この方向、やっぱり森へ行くのね)…突然アンヘル君の足が止まった。振り返ったアンヘル君は凄く緊張してる…ような………え?ここって……

「リズちゃんが好きなんだ…僕と付き合って欲しい」

「…あ、あの…えっと……わたし山岳兵隊長なの!だから…あのぉぉぉ…ね?」

「僕はリズちゃんの為なら騎士隊を辞める。もちろんその覚悟でここに来たんだ」

「い、いい…の?だって!だってせっかく騎士隊で頑張ってるのに!そんなのもったいないよ!」

「もったいない…か。僕はリズちゃんを誰かに取られる方がもったいないんだけど?僕じゃぁダメ?」

「そんなことない!!ダメなんかじゃない!…………わかりました……よ、よろしく…おねがいします」

「やった!こちらこそよろしくお願いします!」

こんなにあっさり恋人になれるの?なんだか急に恥ずかしくなってきた…

「ね、ねぇアンヘル君、…えぇぇっと………そうだ!今から練習試合しない?」

うわぁ…何言ってんの。可愛げない!つい、いつもの調子で練習試合に誘っちゃった…わたしのバカっ!

「もちろん!それでこそ兵団長!どこにだってお供しますよ♪」

 

やっと恋人と呼べる人が出来た。まぁ、結婚はまだまだ先の話だけど、取り敢えず父さんにも報告しなきゃね!きっと喜んでくれるはず♪

 

 

 

報告した翌日の夜、父はガノスへと旅立った。とても安らかな顔だった。だけどわたしは…家長として何も安心させてあげられなかった。

『父さん…ごめんなさい。孫の顔も見せてあげられなかったね。でも、リットン家は断絶させない、ちゃんとわたしが守るから!……父さん、ガノスから見てて下さい!』

 

葬儀を終えてすぐ、ルクバ君からお悔やみを頂いた。『ルクバ君のせいで親孝行出来なかったじゃない!』そう言って泣き縋りたい気持ちを抑え込み、アンヘル君の元へ走った。

 

アンヘル君!」

彼の胸に飛び込んだわたしをしっかりと受け止めてくれる。

「リズちゃん、辛かったね…。僕は何も出来ないけど、何時だってリズちゃんのそばにいる、だから安心して」

ギュッと抱き締めてくれるアンヘル君。ずっと堪えていた涙が堰を切ったようにボロボロと流れ落ちる。あなたの前では、わたしはただの『リズ』になれる…肩の荷が下ろせる気がする…。もっと早くあなたと出会えてたら…もっと親孝行出来たかもしれないね。

「リズちゃん…少し落ち着いた?目、真っ赤だね」

そう言ってわたしの涙を拭ってくれる手に自分の手を重ねた。絡み合う視線を遮るようにそっと目を閉じた…。重なる唇にアンヘル君の温もりを感じながら、全身も包み込まれるような安心感…手放したくない!心の底からそう思ったの。

 

11th◇ガノスへ

今日はやけに身体が重い…今夜あたりナーガ様の遣いが来るな………。

 

「お父さんっ!お、おはようございます…」

「おはようルクバ君。どうした?朝から訪ねて来るなんて珍しいじゃないか」

「い、いや…」

そうか…ルクバ君は『シズニが導く者』の称号を持ってるから察してるんだね。私の命が間もなく尽きることを…。

そうそう、成人してすぐルクバ君が神職服を身に纏った時は驚いたな。君はそんなタイプじゃないと思ってたから。そして今は魔銃導師…立派になったもんだ、親として誇らしいよ。

 

 

朝食を終え、家族が出掛けると家にひとり残った。椅子に腰を掛け部屋を見渡す。此処には半年程しか住んでいないが、騎士隊長居室や花の邸宅での思い出までもがよみがえってくる。

「おじいちゃん」「お父さん」「パパ」「ジェローム君」みんなの呼ぶ声が聞こえてくるようだ。私は…いいおじいちゃんだったかな?いいお父さんだったかな?いいパパだったかな?いい夫だったかな?そんな事を考えてたら再びルクバ君が訪ねて来た。

「お父さん…つらそうだね、2階へ上がる?」

「あ、あぁ、そうだね…手を貸してくれるか?」

 

随分弱々しくなってしまったな…ひとりで階段も上がれないなんて。ルクバ君に肩を貸してもらい2階のベッドに腰を掛けた。

「ルクバ君ありがとう。君は分かってるんだろ?私にはもう時間が残されてないって…。お母さんを頼むよ、シェダルさんはいつも元気で明るい人だけど、人一倍淋しがり屋だから…」

「そんなの…分かってるよ。何年お父さん達の子供やってると思ってんの。心配しなくていいから…少し横になりなよ」

 

 

 

いつの間にか眠っていた。夢の中でシェダルさんが呼んでる…

「……ジェローム君…ねぇ、ジェローム君………」

明るい声がだんだん心配そうな声に変わっていく…ようやく現実に呼ばれている事に気付いた。

「あ、シェダルさん…」

「ジェローム君、どうしたの?らしくないよ!」

起き上がった私をギュッと抱き締めてくる。私も彼女の小さな身体を抱き締め返す。シェダルさんの温もりをいつまでも感じていたい…もう二度と私の腕の中に閉じ込めることが出来なくなる…そう思うと離れ難い。

「シェダルさん…愛してるよ。愛してる…ずっと一緒だから…ね?」

「……………ジェローム君…逝かないで!ずっとそばにいてよ!ヤダぁぁぁ!」

やっぱり気付いてたか…ごめんねシェダルさん。

「そんなに泣かないで。かわいい顔が台無しだ…ほら、笑って…シェダルさんの笑顔が見たい」

「そんなのムリっ!ジェローム君のバカぁ……」

子供みたいに泣きじゃくるシェダルさんの背中を擦りながら、まだ若かった頃を思い出す。

 

成人式を終えたばかりのシェダルさんを困らせた事や、半ば強引に幸運の塔に誘った事、恋人になってから互いに避けてしまった事、プロポーズ前日の情事、そして結婚。

シェダルさんと選抜トーナメントに挑戦して、騎士隊に入隊して、イヴォンさんと3人で探索に籠もって、それから…エルネア杯に出場し、護り龍にも勝って『龍騎士』の称号も得た。もちろん騎士隊長、評議会議長も務めた。手に入れられる物は殆ど手に入れた。それもこれも全てシェダルさんがいたから手に入れられたんだ。

ふたりから始まった家族も、5人の子供を授かり、今じゃ孫まで。私の思い出にはどれもシェダルさんがいる。私の人生、シェダルさん無しでは語れないな。シェダルさんの人生も同じだったら嬉しいよ。

 

 

「思い残すことはない。みんなが笑顔でいてくれれば…………」

 

さて、ナーガ様の遣いの者、そろそろ行こうか!名残惜しいが、いつまでも此処にいたらシェダルさんから離れられなくなってしまう…

 

『シェダルさん…私はいつだって君のそばにいるよ。だから、そんなに泣かないで…ね』

 

 

12th◇憧れ

 

「ル〜ク〜バ〜君♪」

禁断の遺跡を出ると、いきなり子猫のように飛び付いてきた。羽根付き帽子が宙を舞う…なんとか押し倒されないように踏ん張った。

「ねぇねぇ、わたしステキな大人になったでしょ?ね?」

「え…っと?あ、あの…」

誰なの?首に腕を回して抱きついて来られちゃ、顔も見えないよ?

「ねえ、ルクバ君ってばぁ♪」

「ちょっと待ってくれる?悪いけど、誰?」

ベリベリと引っ剥がすように彼女の腰を持ち上げ、降ろす。見えた顔は…メロディさん?

「見て見て!さっき成人式終わったの。どう?ちゃんと大人になってるでしょ?」

スカートを少し持ち上げ、クルッと回って、ニッコリと微笑む。子供の頃から大人びた雰囲気の子だったけど、つい今しがた大人の仲間入りをしたとは思えないほどの艶やかさで私の顔を覗き込む。

「素敵な大人になれたかな?」

「う、うん…そうだね」

「やったぁ!じゃぁ、幸運の塔に行こう!」

「?……待って、どうしてそうなる?」

「わたしが素敵な大人になったら、お嫁さんにしてくれるって約束でしょ!だから先ずは恋人にならなきゃ。さ、行きましょ」

確かに見た目は大人になってるけど、言ってる事とやってる事が子供だ。きっと『お嫁さんになる』って、ただ結婚への憧れだけで私の所に来たんじゃないか?

「まだ成人したばかりだろ、そんなに急がなくてもいいんじゃない?」

「だって…ルクバ君を誰かに取られちゃったらヤダもん!やっと成人したんだよ…やっと告白出来るようになったのに!」

本気なんだろうか…付き合ってから『やっぱり違った』なんてことにならないんだろうか…

「今のまま、友達じゃダメ?」

「ダメ!」

「どうしても?」

「………んー、誰とも…付き合わない?」

「付き合わない!しばらく恋人は作らないから」

「わかった…。じゃぁ、取り敢えず今日は帰る。でも、約束は守ってもらうからね!」

 

 

親友ヤニックさんの妹であるメロディさん。確かに子供の頃から仲良しだし、一緒に遊んできたし、お嫁さんになってくれるって話もした。だがしかし!早すぎないか?それに…仮に付き合うにしても、ヤニックさんに何も言わずにって訳にいかないだろ?あ〜、もう!どうすればいい?取り敢えず『断る』って選択肢しか思い浮かばなかった。

そうやってリズさんからも逃げ続けてきた…。

 

こんな不甲斐ない男なんだから、誰とも付き合わない方がいいんじゃないか?今のところ、恋人がいなくたって別に困ることなんかないし…その方が気楽でいいんだよな。リズさんもメロディさんも、嫌いじゃない、けど…好きかって聞かれると…分からないんだ。もう少し私自身が成長できれば変わるかもしれないけど、今は…独りで構わない。だから…ごめん。

milly◇兄と妹

「あ、あのさ…二人でどっか…………い、行かない?」

長い沈黙。やっぱり言わなきゃよかった。うっっ、殿下の顔が見れないよ……きっと困った顔してる。

『いいね!もちろん行くよ』

うそ…い、いいの?あ~、でもこの先は絶対断られるんだ……殿下は優しいからここまでは受けてくれるんでしょ……

「殿下のことが大好き!……アタシと付き合って下さい!!」

『私もサスキアさんのこと好きだよ。だけど……本当に私でいいの?サスキアさんから見たら私はオジさんでしょ?』

「そんなことない!殿下がオジさんだなんて思ったことない!」

『そう?……ありがとう。じゃぁ、これからは恋人としてよろしくね』

「あ、はい…よろしくお願いします」

 

こんなにあっさり?ははぁ〜ん、これは夢でしょ…夢!うん……きっと夢なのよ。

『家まで送ります。一緒に帰りましょう』

スッと手を繋がれアタシの鼓動は跳ね上がった。いつも繋いでもらってたけど、今までとは意味が違う。ホントに夢?繋いだ手からは殿下の温もりが確かに伝わってくる。包み込まれてるようで…凄く心地いい。

『今日は楽しかった』

まるで親が我が子にキスするように…自然な流れで額にキスを落とされる…

『またね』

「は……………い………………」

は、恥ずかしいっ!ぜったい真っ赤だし、間抜けな顔してる!こんな…こんなこと!うわァァァ、殿下のバカぁぁぁぁ………………アタシはその場にヘナヘナと座り込んだ。夢じゃ…なかった………

 

振り返りもせず後ろ手にドアを閉める。き、緊張した…額とは言え、サスキアさんにキスしちゃったけど、流石にいきなり過ぎたよな……でも、さっきのサスキアさん、可愛かったな。口ぱくぱくさせて、顔真っ赤で、目が点になってた。フフッ……私と違って表情が豊かで、見てて飽きないんだよな。本当は抱き締めたかった…でも我慢したんだよ?一応…大人の男の礼儀として。

ふと表札を見る。え……《サンペリ》?サンペリって、あのサンペリ?…サスキアさんって《サスキア・サンペリ》なの?知らなかった…どうしよ……グェンダル君(サスキアの兄で、妹の恋人)にシメられる!

…………だいたい兄妹だなんて、聞いてないっっっ!!顔だって全然似てないじゃないか!

 

 

ー補足ー

※PCは王太子シンハライト。《10歳まで恋人は作らない》という縛りでプレイ中でした。

 

ビリンガム王家

シンハライト10歳。妹ラズライト8歳。

サンペリ家

兄グェンダル8歳。妹サスキア5歳。

 

グェンダルとラズライトは同級生で、2年前から恋人同士。

 

 

 

12th◇新成人

「ルクバ、成人おめでとう!早速なんだけど今からアウドラに会ってくれない?」

「は?今から?な、なんで?」

「いいから、いいから!はい、いってらっしゃ〜い!」

ラク姉さんに急かされ玉座の間を出る。ほんの数秒前に大人になった私に、玉座の間にまで来て、いきなり女の子を紹介してきた姉…。いったい何考えてるんだ?そういうのはさ…成人して何年か経っても恋人ができない人に紹介すればいいだろ?私はまだ遊びたいって言うか、しばらく恋人を作るつもりないんだからさ…

姉さんの視界から消えたと同時に、私は王太子殿下の所へ走った。殿下とは同級生で、さっき一緒に成人した。ナトル時代から親友みたいなもんだけど、大人になったからには正式に『親友』になりたい。式が終わったら誘うつもりだったのに、姉さんが邪魔するから見失ったじゃないか…

「殿下、一緒にご飯でもどう?」

「ちょうどよかった、俺も誘おうと思って探してたんだ」

 

殿下とは無事『親友』となった。あとはヤニックさんとエクトルさんだな。今日は遅いから、明日にするか。

 

 

 

翌朝

そう言えばヤニックさん、今日誕生日だな。よし、何かプレゼント買っていこう。ヤーノ市場をウロウロしてると…

「おはよう。クルマンさんですよね?あなたを紹介されて来ました。シルヴィと言います、よろしくね」

「あ…はい、よろしくお願いします………」

え?メラク姉さんが昨日紹介した人と違うよね?今度は誰の紹介なんだよ!全く…うちの家族の誰かなんだろうけど、まだ成人したばかりなんだから、しばらく自由にさせてくれないかな…

 

そんな事よりヤニックさんとエクトルさんはどこかな?運よく二人とも割と近いところにいた。二人一緒に誘えればいいのになぁ…。さすがに2食はキツかったが、無事二人とも親友になれた。

 

 

「あの…」

今度は何?

「あなたに奏士の後任として神殿勤めをお願いしたいのですが、いかがですか?」

「は?……え、えっと…私ですか?」

「はい。クルマン君に是非ともお願いしたい!どうかお願いします!」

まぁ…今年はエルネア杯で武術職の募集もないしな…

「私でよければ引き受けますよ」

「では早速、神殿へ参りましょう」

そんなこんなで奏士になった。せっかくだし、家を出て一人暮らしでもしてみるか!

 

奏士居室に荷物を置いていると…

「ルクバ君に紹介したい人がいるの!アスセナって人に会ってくれない?」

タルフ姉さんまで…

「悪いけど、まだ恋人とかいらないから」

「別に恋人になれって言ってるんじゃないわ!会うだけでいいから。ね、お願い!ね?」

「私…そんなにモテない?そんなに心配?もう、放っておいて!私にだって女の子の友達くらい、ちゃんといるから!!」

啖呵を切って居室を出た。

 

 

「ルクバ、今からモニカって人に会ってこい」

「ヤニックさんまで…やめてよ。なんでみんな紹介してくるんだよ…私ってそんなに奥手に見える?」

「奥手?お前が???」

「だって、成人した途端…姉さん達やヤニックさんまで次々と女の子紹介してくるからさ……私には恋人なんて作れないって思ってるんでしょ?」

「違う!ルクバを心配してるんじゃなくて、向こうが紹介してくれって頼みに来るんだ。こっちだって迷惑してるんだ。だからさぁ、さっさと相手決めてくんない?なんなら結婚してもいいんだぞ!」

「け、結婚?!ムリムリムリムリっ!そういうの、まだよく分かんないし、結婚どころか恋人だってしばらく作るつもりないから!」

 

そんなやり取りをしてると、後ろから声を掛けられた。

「ルクバ!あ、あのさ…ふたりでどっか……い、いかない?」

目の前でヤニックさんがニヤニヤしながら見てる。あーもう!今の会話、聞こえてたでしょ?それでも誘って来るって…どういう事?

「ごめんなさい!」

相手の顔も見ずに断わって走り出した。目の端に青髪が映る。ま、まさか………リズ…さん?どうしよう…傷つけちゃったかな?でも、今はまだ考えられないよ…ホントにごめん!

 

はぁぁぁぁ、成人してまだ2日なのに色んな事が起こり過ぎ!私は…いったいこれからどうなるんだろ…。