sothis's derivative work

このブログは《World Neverland~エルネア王国の日々~》のゲームプレイを元にした妄想込みの二次創作物語(SS)を掲載しております。(投稿∶不定期)

wilma◇3.覚悟(ジミー編)

ジミー君に部屋の前まで送ってもらい、ドアを開ける。
「じゃぁ、おやすみ!」
「待って…お茶ぐらい飲んでって」
「もう遅いし…」
夜2刻を過ぎていた。それでも私はジミー君と一緒に居たくて、思わず腰布を掴んだ。黙ったままジミー君が入ってくる。ガチャッと音を立てて閉まったドアに、体がビクッと反応する…
「……………す、座って。お茶、入れるね…」
ゴトッという低い音が床に響き、鎧が転がった。振り向く間もなく後ろから抱き締められる…

「母さんたちと何…話したの?」
首筋にジミー君の熱い吐息がかかり、背中があわ立つ…立ってられない…
「ねぇ、煽ってるの?そんな顔されたら…理性がもたない…」
「っ!!ジミー君こそ…離して」
フッと腕が弛んだ…次の瞬間、ふわっと体が浮き上がり、ベッドに運ばれた…

「このままだとアマリアの言った通り…朝帰りになりそうだ」
イタズラっぽく言ったジミー君が私の鼻をキュッとつまんだ。
「もう!バカ!!」
「じゃぁ、帰るよ。おやすみ」

 

ヤバかった…。あんな顔されたら、いくら僕だって…ぶっ飛びそうな理性をなんとか繋ぎ止めたけど、まだ心臓がうるさい。
「ただいま」
「お帰り!遅かったわね」
「!!べ、別に…何もないから!おやすみ」
「あれは…絶対なんかあったわね」

翌日、僕は朝から森に籠っていた。昨日の彼女の顔がちらつき集中出来ない…いつもなら余裕の所で苦戦する。
「ダメだ…帰ろう」

 

ジミー君が帰ってからも、顔の火照りは治まらない。結局一睡も出来ず夜が明けた。あくびをしながら畑仕事をしてると
「あの…ふたりでどっか出掛けませんか?」
「えっ?私?……あ、はい」
恋人がいるって、ちゃんと伝えなきゃ。そう思って付いていく。
「あの…付き合ってる人とか…いる?」
「うん、恋人いるんだ。ごめんなさい」

 

全く身の入らない探索を切り上げて農地へ向かう。郊外通りで男に付いていくココリネちゃんを見かけた。あの時、彼女と一緒にハーブを摘んでた男だ…あどけなさが抜け、すっかり男の顔になってる。僕はふたりの後を追った。
幸運の塔…あいつ、やっぱり!今までも考えなかった訳じゃない。エナの子に選ばれたってことは…モテるってことだ。彼女には男女問わず沢山の友達がいる。ココリネちゃんを恋人にしたいと思ってる男だって少なからずいるはずだ。頭では分かっていても気持ちが付いていかない。

塔の下から戻って来る彼女と目が合う。
「あ、ジミー君。明日デートしない?」
「ごめん、明日は…」
「そう…残念。じゃぁ、また今度誘うね」
あーーっ、何やってんだろ!本当はずっと一緒にいたい。君のせいで探索だって覚束なくなってるのに!くそっ!!僕は酒場に向かった。

「ウィアラさん、お酒ください!」
「まだ飲むには早い時間よ、どうしたの?」
「たまには朝から飲んだっていいでしょ!お酒ください!お酒!」
「じゃ、一杯だけよ」
一気に飲み干す。アルコールが食道を通って胃に落ちていく…。一体何がしたいんだ僕は…
「もう一杯ください!」
「ダメよ。そんな飲み方する人には提供出来ないわ。何があったか知らないけど、ジミー君らしくないわね」
「…………すみません…帰ります」

 

「ジミーどうした?ウィアラさんが心配してたぞ」
「お前か…」
「つれないな!親友が心配して、わざわざ訪ねてきてやったんだぞ。どうせ彼女の事だろ?この件に関してはお前、ナトルのガキ以下だもんな!」
「悪かったな」
「話したくないんなら無理には聞かないけど?」
「………告白されてた、お前の弟に。別にその事を責めるつもりはない。ただ…僕と付き合ってるんだから、誘われても幸運の塔まで付いて行かなくてもよくないか?そこが理解出来ない…」
「弟の事は…兄として申し訳ない。掲示板見たか?彼女、エナの子になった後、モテ女王にもなってる。こんな事これから何度だってあるぞ。それが嫌なら結婚して、誰にも手出し出来ないようにするのが一番じゃないのか?」
「結婚…?」
「考えてない訳じゃないんだろ?しかしお前がこんなに嫉妬深いとは知らなかったな!それと、ちゃんと彼女の話、聞いてやれ。じゃぁな」
入れ替わるようにココリネちゃんが訪ねてきた。

「こんにちは。さっきのジミー君なんか変だったから気になって…家まで来て迷惑だったかな?」
「そんなことない…座って。さっきはごめん…。明日、僕とデートしてくれませんか?」
「もちろん、いいけど…。やっぱり変!何があったの?私には話せない?」
「………見たんだ、君が告白されてるところ!誘われてもその場で断ること出来るんじゃないの?」
「出来るよ。でも…それじゃダメなの。ちゃんと恋人がいるって伝えるには…塔まで行って話さなきゃ…思わせ振りな態度は取りたくない!だから」
「もう…いい…。君は僕よりずっと大人だ。僕は…嫉妬に刈られて、そんな事も分からなかった。君のことになると余裕がなくなるんだ…ごめん!」
ジミー君が頭を思いっきり下げる。
「頭上げて…私の方こそ、ごめんなさい。ジミー君の気持ち、考えてなかった。もし逆だったら、私だってやっぱりイヤ!」
私はジミー君を抱き締めた。ちょっと驚いた顔をしたけど、優しく笑ってくれた。
「じゃぁ、明日。街門広場で待ってるね」

 

それから順調にデートを重ねた。年が明け、今年は白夜、エルネア杯が始まった。
「いつか僕もエルネア杯に出場して優勝する。そして龍騎士になる。子供の頃からの夢なんだ」
「だからずっと鍛えてるんだね。あのね…私も騎士隊に入れるかな?」
「えっ?騎士隊目指すの?急にどうしたの?」
「急じゃないよ。折角この国で暮らすことにしたんだから、いろいろ考えてたんだ。でね、ジミー君と一緒に瘴気の森へ行きたいって思ったの」
「じゃぁ、もっと鍛えなきゃ。簡単じゃないよ?」
「うん、分かってる!でも夢があれば強くなれる、違う?」
「協力するよ。でも無理しないこと!いい?……君はすごいね、しっかり自分の将来を描いてる。僕もちゃんと考えなきゃ…な」

 

それから暇があれば探索に行った。やっと魔獣の森を踏破した。やった!ビーストセイバーだ!

魔獣の森から戻ると、ちょうどジミー君がモフ毛を刈ってた。
「ジミー君、お疲れ様。聞いて!ビーストセイバー手に入れちゃった!これで探索が少し楽になるかな?…ねぇ……聞いてる?」
「ココリネちゃん!突然だけど…今からデートしない?」
「うん…いいけど。どうしたの?何か怖いよ?」
ずっと黙ったまま手を引かれてシズニ神殿へ。えっ?ここって…まさか!


「あの…これ!……僕と結婚してください!」
ジミー君が差し出したのはエンゲージリング。その手は震えていた…
「も、もちろん!嬉しい…すごく嬉しいよ!」
「はぁぁ、よかった。緊張した…」
結婚式は明後日、17日。

 

沢山の人たちに祝福され、私たちは夫婦と認められた。たまたま立ち寄ったこの国で、愛する人に出会い、そしてこれからの人生を共にすると決めた。命尽きるまで…いや尽きても、ずっと側にいるから!
「ジミー君、愛してる」
「僕も愛してる。一緒に帰ろう、そしてパンケーキでも食べようか。お腹空いてるでしょ?」